伊太利亜的食生活 Everyday Italian
伊太利亜的食生活 Everyday Italian
パシフィックグローブの春はアイスプラントのピンクの花が海岸一面を埋め尽くす。
気温の低い朝の霧はモントレーベイ一帯を覆い、一年中ダウンジャケットは手放せない。
ジョン スタインベックの作品にあるキャナリーロウー、17マイルズドライブとゴルフで有名なペブルビーチ、カーメル、を含めこのモントレー半島にある素敵な街は多くのアーティストや作家を魅了し住まわせている。
まだこの街に多くの観光バスが乗り入れる前、1号線のハイウエーに交通渋滞もなかった頃、僕もこの街に引き寄せられ生活をスタートさせた。
この街の良さを知って来たわけでなく知っていることと言えば鄙(ひな)びた漁港だということくらいだった。先の”ベティーさんの恩返し”に書いたポロアルトの街から近いというだけだったのだが、地図で見て近くても車で1時間ちょっとかかる。
僕のカレッジ生活の出発点となるモントレーに到着したその日、大学のスチューデントアドバイザーの Mr.デブリンに紹介された下宿は1日3食付き、フランクリンアヴェニューの丘の上にある遠くのモントレー空港まで見渡せる眺めの良い一軒家であった。
オーナーはフレッド & マリー アローヘッドの夫婦、彼らと生活を共にすることになる。
フレッドは漁師で自分の”Gigoro”と船を持ち陽の出前に海に出る。
マリーはイタリアからの移民でキャナリーロウー(缶詰横丁)で魚を捌く仕事をしていた。 英語とイタリア語を話すが数を数えるのはイタリア語、彼女のお母さんは庭でできるトマトなどでトマトの瓶詰やピーチの瓶詰などをたくさん作り娘に届けにくる。 これが美味い。
ここから365日エブリデーイタリアンの食生活が始まる。
日本を出るまでは食にたいしてそれほどの経験があるわけでもなく家庭料理に多少の外食程度、まして伊太利亜料理などはスパゲティーナポリタンという茹置きしたスパティーをフライパンに入れ少しの野菜とハムをケチャップで絡める『炒めうどん的スパゲティーもどき』とシェーキズのピザくらいしか馴染みがない。アルデンテなど誰でも口にする昨今とは時代が違う。 今思うと知らないとは淋しいことです。
マリーの食事は本格的で、小麦粉、パスタ、オリーブオイルに到るまでアメリカ製は使わなかった、全てイタリアンマーケットに買い出しに行くのである。アメリカ製のものとは全ての味が違うという。まあアメリカで売られている日本食の食材に当てはめればよくわかる。
そしてですよ、フレッドはその日に釣って来た魚を、マリーは缶詰工場から買ってくる新鮮な魚介類が毎日食卓に上るわけです。魚のムニエル、カラマリ、チョッピーノ、コトレッタ・アッラ・ミラネーゼ(カツです),
スパゲティーカルボラーナについてはまたの話題にするが、山のようにパルミジャーノチーズをかけたパスタ、チーズの沢山入ったミートボール、エッグプラントパルメザン、オリーブオイル&バルサミックビネガだけのサラダ、お母さんのところから持って来たフルーツで焼くピーチパイ、アップルパイ、そしてコーヒー、 これが毎日ですよ!!
これを贅沢と言わずしてなんと言いましょうか! 私は幸せ者です!
そして毎週末にはイースト菌を入れたパンの生地を電気毛布で発酵させパンを2ローフ焼く、それがその週のランチのサンドイッチになる。
家庭で焼くイタリアの小麦粉を使ったパンの美味しさを初めて知ると同時にまがい物しか知らなかったことに気づくのです。電気のパン切りナイフも初めて知った、これがよく切れる。サンドイッチに、フルーツ、クッキーがブラウンバックに入ってキッチンのテーブルに毎朝置いてある。
子供のランチの定番ピーナッジェリーサンドイッチも初めて食べた。
毎日食べるマリーの手料理はレストランとほぼ同じ味であった。まあイタリア料理はそのまま家庭料理と言っても良い。
思うに生活の中で養われる五感。その五感とそのその土地との縁が作る感性は経験なくして育たないと思ったわけです。 今夜はイタリアンレストランにでも行きフランクリン通りからの景色でも思い出しながらチキンパラメザンでも食べようっと思うのです。
キャナリーロー/缶詰横丁
フランクリン アヴェニュー 奥に見えるはMonterey Airport
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